2016年07月04日

ポーラX 〜緊張と緩和なんでございます。

久しぶりに大変変わった映画を見ましたが、大変面白うございました。


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【あらすじ】
城に住んでる(!)お金持ちのボンボンがある日、腹違いの姉を名乗る人物に出会う。
姉は、どうやら東欧系の難民であり、虐げられた暮らしをしています。
その存在を知ったとたん、ボンボン氏はなぜか
「この世の真実を見つけたりっ!」
となってしまい、
自分の裕福な生活のすべてとフィアンセを捨てて、姉と手に手を取り合って出奔します(なぜなんだ)。
そして、生活の術もないまま、順当に落ちぶれていき、最後はテロリストのアジトの倉庫みたいなところに間借りして暮らすようになります。
頼みの綱として書いていた小説ももちろん認められず、体も悪くなり、最後には発狂して往来で自分のいとこ(?)を追い回し、「これで我々一族を根絶やしにできるっ!」と叫んで射殺します(どういうことなんだ)。
警察にその場で拘束された落ちぶれボンボンを見て姉はその護送車に飛び込んで死にます(だからなんなんだ)。

という、あらすじだけ書くとただ暗いだけでて別に見たくなるような要素はないですな。

ポーラX
↑金持ちのボンボンと、突然現れた隠し子の姉。

ところが結構面白いのは、
まずひとつには、妙なコメディのセンスに終始彩られていることです。
いわゆる桂枝雀師匠いうところの「緊張と緩和」っていうんですかね、
時々さしはさまれる、爆笑、失笑、苦笑い、が好みだったのでございます。

一番笑ったのは、落ち延びて落ち延びて、不幸な状態でテロリストのアジトにたどり着いたとき、
その倉庫の地下みたいなところで、みすぼらしい恰好をした人たちがめいめいよく分からない楽器を手にして
よく分からない音楽を一生懸命に奏でていたシーン。
それまでは結構フランスっぽい陰鬱なメロドラマの流れで来てるのに、ここから急に前衛芸術みたいな全然別の映画になっちゃうわけですが、
そのつなぎのガラクタオーケストラのミスマッチがまあ極端に目立っておもしろく、
ひとりで「えーーっ」と奇声発してしました。
このアジトのシーンからいよいよひどい目にあっていくわけですが、このボロボロオーケストラのおかげで
「今見てるのはふつうの映画じゃないんだ」
っていう宣言になってたのが、いい感じのクッションです。

ポーラX
↑倉庫の地下の謎オーケストラ。みんな不幸せそうである。


あと笑ったシーンは、「最近、黒髪の女性につけられてる夢をみるんだ」って悩んでいた主人公ボンボン氏が
初めてその黒髪の女(姉)が本当にいることに気付いて、追いかけようとした瞬間の姉の転びっぷり。
あまりにもコメディ的に完璧だったので、思わずそこだけ巻き戻して見直そうか、と思ったほどですした。カテリーナ・ゴルベワ、いい女優さんだねー。

polax
↑この男根の形の岩の下に”そっと寝そべりに行く”シーンも結構笑った。こういう「なんか一人で盛り上がっちゃう精神状態」ってわかりますわ(ツライ)。


そんなわけで、いろんなシーンに大笑いはしたんですが、非常に身につまされる話でもあります。
「これこそが真実の自分だっ!」
と思いこんで、どんどんどんどん”それ”を剥いていったら、実は剥いちゃいけない玉ねぎみたいなもんで最終的に中身がからっぽだった、という話。
正直、ありがちすぎてツライので今さら直視させないでいただきたいところです。
「みんな愚鈍だから真実に気づかぬふりをして生きているのではなくて、そもそも自我玉ねぎは剥くもんじゃなかったんだーっ!」
って、剥き終わってから気付くもんだよねー(しみじみ)。

ポーラX
↑最後は人を殺して警察に拘束される、というまあ暗い話ですが。



謎のアジトのシーンから以降は現実なのかどうか自体がちょっと良く分からない撮り方なんですが、
血の海で溺れるシーンなんかがあることから考えても、
ダンテの地獄めぐりがモチーフであるように私には見えました。
一人の人間の「光の側面」であるボンボン氏と、「影の側面」である寄る辺なき姉とが一緒に地獄を巡ります。、
それを救うためにボンボンの元フィアンセが救済の天使としてアジトに登場するんですが、
二人の魂は救われることはなく、ふたりともほぼ同時にこの世とのつながりを失ってしまいます。
ラストで絶望した姉が車に飛び込むシーンでは、天使であるフィアンセが、隣にいた自分の弟の目をパッとふさいで、魂が地獄に落ちる瞬間を見せないようにする、というやさしくて印象的なカットにつながっていたのだと思います。

ポーラX
↑白い衣装の婚約者。いい人であります。(いくら金持ちのウエディングドレスでもそんな作り方はしないだろう)

そんなわけで、前半は金持ちのボンボンの中二病を巡るメロドラマ、
後半は地獄めぐりの旅、
そしてわが身を振り返って居心地悪い思いをしつつ見つつも、唐突なユーモアシーンにきゃっきゃうふふと見る私。
といったような作品でございまして、結構好みでありました。
地獄物、好きなんですよね。



レオス・カラックス監督見たことなかったですが、どうかしてるので、もうちょっと見てみたい。

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←秘密を暴こうとして、城の中の塗り固めた扉をたたき壊してみたら、中が空っぽでがっかりした、というシーンが間抜けで悲しくて好き。
posted by 六条 at 02:39| Comment(1) | 映画とDVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月21日

「デットプール」 〜いろいろとひどい割には親しみやすい

デットプール見てきました。
デットプール
→公式サイト映画「デットプール」


面白かったです(っていうか、いろいろ酷かったです)。

最近のアメコミヒーローものがやたら話しがでかくなりすぎているのはいかがなものか、と思わなくもないので
ストーリー自体はたいへんシンプルで、ばかばかしいことと、
映像がすかっと派手なのと、
アメコミマニアのためにほかのヒーローの類を茶化して回るのに特化した作品、
というのもあってよいのではないか。
本当に漫画を読んでる感じでございました。

デットプール
↑日本向けトレイラーだとなぜか”無責任ヒーロー”で売ってるけども、別に責任感に問題は感じられなかったです。発言がいろいろ酷いだけで。

映画館を出ると心にはあんまり何も残ってないんだけど
映像と音楽は非常にかっこよかったので、気分はいい、という
ザ娯楽映画なのでした。
なんかXーメンについてだいぶイジってたなー、とか、それくらい漠然とした感想。

事情があって好きな人と一緒にいられないんだけど、
隠れてずーっとそばにいてその人を見守っている、という
実は昭和の純愛モノのようなラブストーリーがベースになってるのも
古臭いかんじで意外にも親しみやすいのです。
(昭和だと純愛ですが、現代でいうとストーカーとしてわりと成立しにくくなってきてるラブストーリーですな)。

デットプール
↑美人と付き合いすぎるとそこで幸運を使い果たしてしまうのでしょうか…。

映画の中の世界観を壊して観客のほうに語り掛けてくる演出とか、
マーベル系列の他作品の楽屋オチ風ギャグの多用とか、
どちらかというとあんまり私が好きじゃない要素も実は多かったんですが、
なんとなく「楽しいことに特化しよう」というテンションがあんまり高かったんで、作品の勢いに押されるかんじでOKでした。

デットプール
↑盛り上がってくると観客のほうに語り掛けちゃう、という手法は図らずもスーパーになった主人公の照れの表現としてよくハマったんだなー、と思います。

予算は潤沢に使うけど志は低いっ!
現代の社会問題とかに鋭く切り込まないっ!
という点において素晴らしい作品なのではあるまいか。

アメコミヒーローマニアでもなんでもないので
あんまり内輪向きのギャグがよく分からくて
「漠然とは面白いけど適切な突っ込みがわからない…」
というシーンが多かったのですが。
そちら系詳しい人が見ると、もっとずっと面白いと思われる。
ちなみに女性一人で見に来ている人はおりませんでした。やはり。




←悪そうでかっこいい女性キャラが多めに出てくるところとか、イイね!
posted by 六条 at 18:00| Comment(0) | 映画とDVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月06日

映画「ちはやふる」〜あったようななかったような青春時代


ちはやふるを見てきました。
すでに下の句が公開されてから見に行ってしまったため、
公開時間の関係で本来のストーリー流れとは逆の
下の句→上の句の順番で見てしまったのがやや残念だったもの
とっても楽しめました。
ちはやふる
→映画「ちはやふる」公式サイト

「日本映画はハリウッドと比べて予算で圧倒的に負けるのでアルカラシテッ」
とか言ってないで、こういう日本らしい作品、どんどん生まれてほしいです。
「こんな青春時代過ごしたことないけど、なんか懐かしいような気がする…」
という小さい感傷の揺さぶられ方加減がちょうどいい感じでした。

とはいえ、見た直後しばらくは、
前半のテンポの良さに比べて後半のストーリーの失速著しく、
登場人物が立ち止まってしゃべりすぎだろ、と思ってはいたのです。
上下に分けないで一本にまとめればもっと全体としてのテンポがよくなったのではないだろうか
という感想でした。

ところが、よくよく考えてみるとこれ、「前編」「後編」じゃなくて
「上の句」「下の句」なんです。
上の句が開示された状態では(魅力的ではあるものの)まだ全体像ってよくわかっていなくて、
それが切り離されて存在する下の句との繋がりを発見することにより前半の意味も理解できるようになる、
というカルタ取りとおなじ構造で作ろうとしたのかもしれない。

ちはやふる
↑単に音の繋がりでしか考えていなかった百人一首の意味を部員それぞれのものとして体験していく話でもあるわけで。

そうすると、活動的にキャラクターが立ってて魅力的な上の句に比べると
下の句は圧倒的に内面描写が増えている、
ということにも理由があるように見えてくるのです。
なんだ、めちゃくちゃかっこいい構造じゃないのっ!
(それでも立ち止まってしゃべるシーンちょっと多すぎだろ、とは思うけど)。

それから、
女子高生特有の蓮っ葉なジャージの着崩し方、とか
吹奏楽部が年中うるさくて暑苦しい部室とか、、
昭和の個人書店に存在していた、営業時間に絵本なんかを外にだしておくためのスチール製の回転する簡易本棚、とか
誰しも心あたりのある風景の描写がとても綺麗に描かれている作りこみ具合もとても良かったです。

ちはやふる
↑机が友達、机くん。私もこんな感じで本の陰でおべんと食べてましたので大変シンパシー。

あと、超可愛すぎる広瀬すずが、明らかにモテる見込みがないために孤独の中に安住の地を見つけ出しつつある冴えない男子高校生、机くんに向かって
「私、机くんがいい。机くんじゃなきゃいやだっ」
と叫んで殺しにかかる、という残虐シーンも大変良かったですね。
霊長類ヒト科の中でこういう類の無駄な殺生をためらいなくやるのって女子高生くらいだよなーっと思いながら
天国と地獄をいっぺんにみる机くんの心中を思うと胸がひりひりと痛んで、なんかとっても……気持ちよかった(マゾ?)。

ちはやふる
↑「俺じゃなきゃ嫌だなんていいながら結局単なる人数あわせ要員じゃないかっ!」と泣き出してしまった机君に対して「俺だって才能なんかないよっ」とまったくかみ合わない謎の自分語りで切り返すイケメン太一。イケメンと美少女の押しの強さにうっかり丸め込まれちゃ駄目だぞ♪(でもたぶん丸め込まれたほうが青春は楽しい気がする)。

連休中だったこともあって、結構大きなシアターにお客さんもたくさん入っていたのですが
私の隣に座っていたのが、いわば現役世代、
大きな部活バックを抱えた高校生と思しき男の子たち五人組だったのです。
私がどんなに憧憬とノスタルジーに心中ゆすぶられたり、映画の構造を考えて一人で膝を打ったりしていても
彼らがリアルタイムで自分の経験に近いこととして青春映画をみる、という感動には絶対遠く及ばんよな、
と思って、その切ない感じがまたいいのでありました。
映画館って、どういう人たちがこの映画を見てるのか、ってのを感じ取れるのも楽しみの一つですな。





←アニメもぜひ暇をみつけてみてみたい。
posted by 六条 at 18:00| Comment(0) | 映画とDVD | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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